わらいきオリジナル台本 (一人劇)

「7匹の子ヤギ」-三女:末っ子フツのひとりごと- 作:クリム

 

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<キャスト>

三女・末っ子  フツ

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あ~、今日はびっくりしちゃった。

悪いオオカミが来てお姉ちゃまたちを食べてしまうんだもの。

でもみんな助かって本当によかったあ~。

だけどね、これは内緒だよ。私ね、あれ~、ちょっとおかしいな~って思うことがあるのよ。

ねえ、フツちゃんのひとりごと、聞いてくれるかな?

 

オオカミが襲いかかってきた時、私はね大きな古時計の中に隠れたんだよ。

それでね、いつのまにか眠っていたの。

でね、お母さんがみんなを呼ぶ声がして、私は目が覚めたの。あれれ、眠っちゃってた~って。

お母さんにね、「フッちゃん、一体何があったの?」って聞かれて、私、思い出したんだ。

オオカミがおうちに入ってきて、お姉ちゃん達を食べちゃったって。

でもね、私は眠っちゃってたから、狼が本当にお姉ちゃまたちを食べたのか、実際には見ていなかったんだぁ。

それでね、私はとても不思議だったの。

だって食べられちゃったはずのお姉ちゃま達が、居眠りをしているオオカミのおなかの中で生きていたんだもの。

お母さんがオオカミのお腹を切っちゃっている時、私、怖くて目を閉じていたの。

でね、そっと目を開けたら~

「お母さん、怖かったよ~」って、お姉ちゃまたちが目の前に現れたの。

私、お姉ちゃまやお兄ちゃまに会えて、とっても嬉しかったわ。

それでね、みんなが口を揃えて、私にこう言ったの。

「ありがとう、フッちゃんが悪いオオカミからうまく逃げてくれたから、私たち助かったのよ」って。

しつこいくらいにお礼を言うのよ。

その後、寝ているオオカミのお腹に石を詰めていたけど、私はちゃんと見ることができなかったの。

お母さんはチクチク縫って「はい、出来上がり」なんて言ってたけど、あれって本当のことかしら?

優しいお母さんがそんな残酷なことをするかしら?

あのね、ここからが私の推理だよ。笑わないで聞いてくれる?

実はあのオオカミの正体は、遠くに働きに出かけてずっと帰ってこない、ふっちゃんのお父さんじゃないかしら。

ノンキ?ノンキホーテっていうお店があるでしょ?

そこで着ぐるみって言うのが売ってるらしいんだけど、あなた知ってるかしら?

オオカミの着ぐるみもあるらしいの。

オオカミの着ぐるみを着て変装したお父さんは、私が古時計の中でクークー眠っている間に、お姉ちゃま達を食べちゃったフリをしたんじゃないかしら。

着ぐるみのファスナーを下げて、お姉ちゃま達に中に入ってもらったんじゃないかな?ドナお兄ちゃんだったら、そういうお芝居みたいなことを楽しんでやりそうだわ。

お母さんも、チクチク縫うフリをして、実は石を入れてファスナーを閉めただけじゃないかしら。

お父さんは昔から泳ぎが得意だっていう話を聞いたことがあるわ。

今頃、着ぐるみをさっさと脱いで、川をあがってお仕事に行ってると思うの。

え?なんでそんなお芝居を家族みんなでするのかって?

きっと、いつもマイペースでのんびり屋さんの私のことを、とても心配していたから。

私に自信をつけさせるために、家族みんなで芝居をしたんじゃないかしら。

あ、ドナお兄ちゃんは「きっとフツはとろいからすぐオオカミに捕まるぞ~」なんて考えていたでしょうけど、おあいにくさま~。

だけどね、私、みんなのお芝居に気が付かないフリをしてあげてるの。

のんびり屋に見えて、実はしっかり者なのよ、ワ・タ・シ。

でもね、まだまだ家族のみんなに甘えたいから、末っ子のフッちゃんは、これからものんびり屋さんのフリをするわ。

これからもずっとね。

みんな、このことは内緒だよ。

フッフッフッ~♪

 

end