「人生100年時代」   作 スープ

 

<キャスト>

女性A

 

 

私ナ  秋晴れの空の下、ベンチに腰掛ける私。
    気分は晴れず、はぁー。とため息が出る。
    そこへ、息を切らして、元気いっぱいに一人の女性がやってくる。

 

女性A あー疲れた。まだ来てないわね?お隣よろしいかしら?

 

私   あ、はい。どうぞ。(私はベンチに置いた荷物を膝に乗せる)

 

女性A それにしてもいい天気ね~。頭使って疲れたけど、やっぱり楽しかったわ。

 

私   (何だか、すごくイキイキしている女性のことがとても気になった私は、思い切って尋ねてみた)
    あの・・・。すごくお元気ですね!頭使ったって・・何をされてたんですか??

 

女性A あらやだ。私、独り言が大きいわよね。フフフ。
    今ね、お茶のお稽古の帰りで、迎えに来る主人を待ってるの。
    さっき、あなた、すごく元気ですね、って言って下さったけど、そんな元気に見える?
    私、大病して大変だったのよ。

 

私   え??大病?ご病気されたんですか??そんな風に全然見えません!

 

女性A そう? フフフ。

 

私   ・・ご病気されても、お茶のお稽古は続けていらしたんですね。

 

女性A さすがに一時は辞めようかな?とも思ったし、
    そもそも、もう出来ないって思ってたんだけど、
    仲間がね、もうすぐ来る夫もそうだけど、応援してくれて、
    「続けてごらん」って言ってくれるのよ。それが嬉しくて。

 

私   素敵なお仲間がいらっしゃるんですね。

 

女性A そうね。やっぱり仲間はいいものよね。あなたは、お仲間いらっしゃる?

 

私   私は・・・。正直、これからどうしたらいいか悩んでいるんです。
    やりたいことがあって、それを通じて仲間が出来ればいいなーとも思うんですけど、
    もう、こんな年齢だし・・今からじゃ無理かな・・とかって思ってしまって。
    お茶はおいくつからされていたんですか?10代とか?

 

女性A アハハ。やだ、あなた。私はね、19歳からずーっと洋裁をやっていたのよ。仕事でね。
    でもね、このまま年をとるのはつまらないって思うようになった頃、
    仕事仲間でお茶を習っている人がいて、その人から、
    「あなたもお茶をやらない?」って誘ってもらったの。
    お茶なんて、自分では一度もやったことがなくて、全くの初心者だったけど、
    せっかくだから見学に行ったのよ。
    忘れもしないわ。その時にいた大先生が、私のことを
    「年とった初心者だから無理」って言ったみたいなんだけどね。
    私はあんまり難しく考えてなくて、
    お茶ってなんか奥深そうで面白そうだな~って気持ちで習ってみることにしたのよ~。

 

私   習いだした時っておいくつだったんですか?

 

女性A 45・6ってところよ。

 

私   え??今の私の年齢と同じです!失礼ですけど、今はおいくつなんですか?

 

女性A フフフ。80よ。

 

私   え??ってことは35年もお茶を習われているんですね。

 

女性A アハハ、もうそんなになるのね。あ!来た来た!ここよ!

 

夫   おー。お疲れさん。俺も今、終わったよ。おや?こちらは?

 

女性A 意気投合して楽しくお喋りしてたのよ。ね~。

 

私   え?あ、そうです。素敵なご生活のお話を伺ってました。

 

女性A この人もね、私以上に元気なのよ~。
    若い時は仕事・仕事で趣味も特になかったから、
    年とってからどうなるのか心配してたんだけど、
    カラオケの会に入ったら、もう笑っちゃうくらいカラオケ三昧!

 

夫   ハハハ。まあ。そうだな!
    そうだ!今度、カラオケのステージがあるから、シャツを新調したいんだよ。
    いいよな?

 

女性A え!!また?この前のがあるじゃない!!

 

夫   あれは、前の曲用だろ~。ステージ衣装は重要なんだぞ!
 
女性A もう!仕方ないわね~。
    (「私」に言うように)全くね~

 

私   (噴出すように)プッ、フフフ、ハハハ
    あ、ごめんなさい。何か、お二人がすっごく楽しそうで思わず笑ってしまいました。
    自分の好きなことを楽しむっていいですね~。
    私、何だかすごく元気な気持ちになってきました!

 

女性A さっき、あなた、やりたいことがあるけど、もう遅いっておっしゃっていたわね。
    私達の年齢になるまでまだまだ35年もあるじゃない!
    35年続ければ、その道のプロよ!
    もしその間に病気になったとしても、応援してくれる仲間がたくさんいるわよ!ね!

 

夫   そうだな。いつも笑顔で前向きに生きていったらいいと思うよ。
    一度きりの人生だからね。

 

女性A 人生100年時代。まだまだこれからよね!

 

私   お二人のこれからの夢は何ですか?

 

女性A 夢かー。そうね・・、まだまだやってみたいことには挑戦してみるわ!
    20年あれば、またプロになれるかもしれないものね!アハハハ!

 

夫   俺は、これからデビューするぞ!ハハハ!
    そういや、この前テレビでいいこと言ってたな。
    俺たちは、年老いたから遊ぶのをやめるのではなく、
    遊ぶのをやめるから年老いてしまうんだって、さ。

 

女性A アハハ!いいわね~!多いに遊びましょう!

 

夫   よし!これからだな!!

 

私ナ  気落ちしていた私の心は、お二人のお陰ですっかり元気になった。
    自分にとって「楽しい」ことを、とことん楽しもう!
    人生、まだまだこれから。

 

 

<終わり>

※夫婦の趣味活動については、別のものにアレンジ可能